専門が「価値論、道徳心理学、進化論」*1の哲学教授による進化と倫理学が交錯する分野の入門書。 同じ領域を扱っている本が最近日本でもいくつか出ており、道徳の生得論争や生物の互恵性については『モラルサイコロジー』や『自然主義入門』が、10~12章の道…
1965年7月ベッドフォード・カレッジでおこなわれた科学哲学国際コロキウムでのカール・ポパーとトマス・クーンの理論とを対決させるという形で展開された討論を本にしたもの。クーンのよき理解者マーガレット・マスターマンや空気の読めないファイヤアーベン…
科学の相対主義者と言われる人って大抵「私は相対主義をとるわけではない」とか書いてたりするもんなんだけど、ファイヤアーベントという人は相対主義を引き受けてるわりと珍しい科学哲学者で、本書は自伝もちょっと入ってるとはいえポパーdisってヘーゲル擁…
まずはこの邦題に注目されたい。 『科学は合理的に進歩する』 人文学に親しんでいる方なら、タイトルを見ただけで、パラダイム間の共約不可能性とか現象レベルのデータから理論は一つに決まらないという決定不全性だとか、はたまたSTSでもSSKでもなんでもい…
道徳的判断に関わる心理や行動についての記述的探究を紹介しつつ、それが「〜してはならない」や「〜すべき」といった規範を扱う倫理学説にどう関わってくるかを扱うモラルサイコロジーの本。 なんだか倫理学にケチをつける分野なのではと警戒する読者もいる…
やまがたさんが訳し、スティーブン・ピンカーも賞賛、ということから察しがつくと思うが、ジョナサン・ハイトやジョシュア・グリーン、マーク・ハウザーといった勢いのある科学者が出てくる科学寄りの本。倫理学の話も出てくるがそれメインではない。 原題は…
色の見え方の進化的説明とか(恐竜の時代に哺乳類は夜行性だったので4つの錐体(すいたい)のうち2つを失ったが果実食への適応で3色型を取りもどした等)好き嫌いや薬はだんだん効かなくなるといった、本書に登場する大抵の話はヒトのサブパーソナルな領域…
ベリーショート更(略タイトルについて、科学/と/宗教ということなのかと思っていたら「科学と宗教」という分野がいちおうはあるらしい。 ヨーロッパ学会や国際学会もあるので、へぇそんなにと思うがどれぐらい盛り上がってるかはわからない。 http://www.es…
ベリーショート更新シリーズ定番の入門書として知られてる(らしい)OUPのvery short introductionシリーズがサイエンスパレットとして丸善から翻訳されておりますが、これはそんなかの「科学革命」を扱ったもの。科学者と宗教家の闘争の時代というような19…
現代科学というと真理を追究して純粋に探求を行っているという一般的なイメージがあるかもしれないが実際はポスト獲得や予算取り、昔からなんとなく続いてる制度など、生臭い要素が絡む営みでもある……という割とよく聞く話は科学史やら科学思想などのオハコ…
戸田山さんはよく文体が言及されるけど『交響するコスモス』に載ってるような終始キリッとした文章もあれば、雑誌の『科学哲学』あたりの論文の、元々持ってるユーモアが滲み出てる程度の文章もあるわけで、本書はどうなのかというと一般向けの新書というこ…
ジョン・サール『言語行為』の第八章『「事実」から「当為」を導く議論について』で ヒュームにはじまる、事実(である)から当為(べし)を導けないというアレにサールが挑んだおはなし。サールはisもoughtもありふれた語で、とりたてて倫理学固有の問題で…
手順はじつは非常に簡単だ。まず、いくつかに分ける。もちろん量によっては、ひとつにまとめてしまってもよい。いっぺんにやりすぎないことが大切だ。すぐにどうということはないが、いずれやっかいなことになるかもしれないからだ。間違うと、高くつくこと…
唐突だが次のような話し方を示されたとして 1そうじゃ、わしがしっておるんじゃ 2そうよ、あたくしがぞんじておりますわ 3そや、わてがしってまっせー 4これながいきの薬ある。飲むよろしい。 多くの日本人は1を老人2をお嬢様3を関西人、4を中国人と捉えるの…
本書ではレイシズムを「皮膚の色、エスニシティ、国籍、あるいは宗教といった特性に基づいた排除や中傷」としている。大事なことなので最初に書きました。危険なレイシズムを抑え込もうという人達と、積極的にレイシズムを支持する人達あるいはレイシズムを…
勁草書房から出ていた「シリーズ心の哲学」の新シリーズが登場。とりあえず「Ⅰ」だけ読んでみたが、ここ数年の哲学的・経験的探求の成果が取り入れられ、概念の理論や他者理解などホットなトピックも抑えてあって、タイトルに偽りのない一冊になっている。読…
パキスタンの理論物理学者によるイスラーム圏の科学史の本。 前言は1979年ノーベル物理学賞というのを受賞した(らしい)モハンマド・アブドゥッサラームによる。原書は1991年と20年以上前の本なので状況は変わっているかもしれないが実に面白く、アップデー…
本書の目的は近世(17世紀末から19世紀全般)における思想・宗教・文化面での「東西交流」「東西関係」に新たなメスを入れること。たとえばライプニッツがイエズス会の中国伝道師らとの交流を通して早くから中国思想に強い関心を示していたことは比較的よく…
Twitterで音楽美学・音楽社会学クラスタにはおなじみ増にぃのごほん。 つぶやきのノリと文体のギャップに最初いささか戸惑う・笑ロラン・バルトやミシェル・フーコーの「作者の終焉」の議論とのアナロジーで、ニコニコ動画やクラブミュージックのサンプリン…
これまでの米国の移民史研究ではヨーロッパ系移民を中心に論じられ、アジア系移民はあまり扱われることがなかったが、本書はそこにばっさりメスを入れ、東南アジアの植民地化とそれに伴う広東、福建からの労働力移動といったプル要因やアヘン戦争、太平天国…
ポール・ファーマーは貧困国で結核やエイズの医療活動を行ってきた医師・医療人類学者であり、政治哲学的にはアマルティア・センに近く、じっさいセンが序文を寄せている。 1部はハイチなどで著者が見聞きしたことの記述やインタビュー、2部は通常の人権の…
「サブリミナル効果でものを買わせることができる」とか「怒りは抱え込まず発散したほうがいい」といった通俗心理学に対してより巧みに操作された実験データによってそれらが不適切なことを明らかにしていく科学的な心理学の本、 とかいうと一部苦い顔する人…
最近新書を出した戸田山さんの立場についてじゃっかんのフォロー戸田山の立場 1.「物質的世界のしくみがどうなっているか」については経験的探求を優れた手段とみなす 2.科学的考慮を超えた、経済的・社会的・倫理的考慮が入り込んでくる問題に対して科学・…
主に英語圏の心の哲学などの分野で、素朴心理学(=解釈理論)ってのがあって、これ、どうも「古代から人々が実際に使っている」とか、「いや分析哲学で形成された哲学理論だ」とか見解が分かれているようなのですが、ここでは信念体系の整合性や合理性を中…
フランスのヘーゲル受容に興味があったので読んでみまつた。著者のドミニック・オフレは1958年生まれの精神分析家で、本書の原典はパリ人文社会科学アカデミーのジラルド賞というのを受賞しているのだそう。 8925円673ページの大著で(おれ新品で買った)、…
はじめにいっとくと、「テストに合格する」といった自己啓発(?)みたいなの期待するとおそらく肩透かしを食うので、そういうのを求めてる方は他を当たるべし。本書は一般向けの逸話やエピソードは控えめで、そのぶんデータの吟味、対立する知見の間の矛盾…
Alexander Rosenberg "Philosophy of Social Science 4th edition"科学哲学では線引き問題とか理論的対象の実在論争の他に、個別科学の哲学といって「生物学の哲学」とか「心理学の哲学」なんて分野がある。本書は「社会科学の哲学」のイントロダクション。…
温泉に行くも人大杉。屋外の日陰でひぐらしの鳴き声に囲まれながら本読んだりしてだらだら過ごす。 空模様の縫い目をたどって石畳を駆け抜けると夏は通り雨と一緒に連れ立って行ってしまうのです。 Edouard Machery "Concepts are Not a Natural Kind." Phil…
……みたいなことに今ちょっと興味あります。川本せんせいの『ロールズ』なんか読むとけっこう分析哲学の有名人がポンポン登場するんDAYONE。 たとえば冒頭の架空インタビューでロールズにこんな発言させてるね。 ところで今のラインアップ(『現代思想の冒険…
レベルの高い分析形而上学の議論をTogetterとかで読むと論理学べんきょうしたくなるのである。というわけで今度問題集でも買ってこよっかな。 さて、本書は「フランス」で「現代」で「哲学」ですが「フランス現代思想」ではありません。 著者であるフランス…