遙洋子『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』

初出は2000年ですが今更ながら読んでみました。遙洋子さんが上野ゼミに参加していた3年間をまとめたエッセイ。東京大学上野ゼミの様子が垣間見れて興味深い。上野さんは大学ではかなり厳しい様子で、自分だったらこんな環境無理だろうな、と思った。そんな中タレント活動しながら3年間上野ゼミに参加し続けた遙さんはすげえタフだとマジで思う。凡俗なら三ヶ月ともたないのでは。深夜、カフェインドロドロのコーヒーを飲みながら文献を読む描写など、大学生として頭が下がる思いだ。上野教授はちょっとでも飛躍や抽象的な単語があると、そこを見逃さず、突っ込む。「わからない」と。「上野の前で不用意な言葉を吐くと私は突然物分りが悪くなるのですよ」と言い教室を出て行こうとする上野教授。それに対し「コワ〜」とささやくゼミ生。しかし、上野教授は聞き逃さなかった。「私は何もわからないことを、わかった気になってしまうことのほうがよっぽど」と言葉を止め、はっきりゆっくり言葉にした。「コワイ」そして扉が閉まった。かっけー。「わからない」ってバカがいう言葉じゃなくてどっちかっていうと聡明な人が言う言葉だったんだね。

なんというか、正しい「学者」ですね(まあ上野さんもたまに突拍子もないこと言うけど・笑)。でも下手に真似するとライトな付き合いの友人は去っていくので注意しましょう。孤独に耐えられる強い精神力と知識・知性が必要ですな。俺にゃ無理。バリバリのアカデミズムと芸能界という恐ろしく距離のある世界を行き来していた稀有な人が見た世界・感じたことが書かれてあるということで、得られるものも多く、読み物としてもすごく面白かったです。斎藤美奈子さんが解説で賞賛してるがさもありなん。ところで、20万売れたらしいよこの本。

東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ (ちくま文庫)

東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ (ちくま文庫)