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『レヴィナス 何のために生きるのか』小泉義之

読書

フランス出身のユダヤ人哲学者のエマニュエル・レヴィナスは幼少期から親しんでいたユダヤ思想とフッサール直伝の現象学実存主義をミックスさせ独自の思想を築いた。ここ日本において、実存系の哲学者ではサルトルハイデガーなんかと比べどこか地味な印象があるけど、講演依頼や雑誌のインタビューで人気の思想家・内田樹さんがレヴィナスを師と仰ぎ著書でもよく援用しており、実はぼくも内田さんの本を経由してレヴィナスを初めて知り、興味を持った。
レヴィナスの思想はわかりやすいようでわかりづらい。他者との共存みたいなことを言うのだけど、そんじゃあ道徳を説いたり説教くさい内容なのかというと、どうやらそういうことではないらしく、他者の像を想像することは、同情・共感なのではなく苦しみ喜びを分かち合うことなのではなく、その生存を肯定し生存を分かち合おうとすること、らしい。深遠なことをいってるようではあるがしかし「共感」と「存在を肯定し合う」の違いが微妙でわかりづらい。また、他者との共存というと「利他的に生きよ」ということだと理解してしまうが、利己的に生きることを否定しているのではないらしい。むしろ「利己主義を生きることが利他的なるものを養うことにつながる」などと言ったりする。「利己心の発動が見えざる手に導かれて社会の富につながる」といったアダム・スミスの『国富論』みたいな話かしら?いくら思想とはいえ現在の科学的見地からすると、かなり飛躍があって抽象的な内容である。まあ100年以上前に生まれた人だからね。まさにクラシックな哲学という感じだ。だから文学作品として読むのがいいのかもしれない。