『ロラン・バルト』グレアム・アレン
- 作者: グレアムアレン,Graham Allen,原宏之
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2006/04
- メディア: 単行本
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バルトはイデオロギーに根をもつ世界観の表明=神話を解体するために記号学を利用した。例えばバラはそれ自体はただの植物だけど、なにやらロマンスとか愛とかいった概念と結びついている。他にもただの黒人フランス兵の写真がフランス愛国主義と結びついたりとか、神話はそういった記号システムから構成されていて、そういった普遍的価値をもつとされる記号がいかに歴史的・文化的に作られたものであるかを暴き、神話から神話性を剥ぎ取る。それがバルトの企図だった。またバルトは決まった一つの意味をもたせた道具的・断言的な文章を嫌い、多義的で宙吊りにされた文章(エクリチュール)を称揚した。バルトが日本の俳句に注目したのもこのためだ。俳句は一つの意味が決まっているわけではなく、意味内容を宙吊りにしており、ただひたすら味わうだけだ。そこにバルトは理想的なテクストを見る。逆にバルトは押しつけがましい道徳的な文学を嫌った。ようは自由に解釈できるテクストを書き、それを自由に味わうことを称揚しているということだと思う。だからこうしてバルトのビギナーズ本なんかを読んで、思想の要約なんか書くというのはバルトの考えに反した行為なのかもしれない。
現在では、バルトが生きていた冷戦時代の世界の構図は冷戦が終焉することで変わり、もはやバルトの思想は無効だと考える学者もいるようだ。それでも、一般に正しいとされる優勢な考えとか権威を疑うといったアイディアは今でも有効だよなあなんてことを思ったりした。