『科学哲学の冒険』戸田山和久

軽妙な語り口と髭が特徴の戸田山和久さんによる科学哲学の入門書。ポパーとかクーンの議論が知りたいなーと思って買ったら、直接的にはそういうのはあまり載ってなかったものの科学の意義とか可能性についてすごく明るくなれた。理系のリカちゃんと哲学科のテツオ君の対話形式で読みやすい。戸田山さんのスタンスは科学的実在論というやつで、あまり哲学を甘やかさない。しかし、読んでいるとこの人の哲学に対する愛情も感じられた。以下、個人的に重要と思った部分を箇条書き。

・scientistというのは19世紀につくられたコトバでそれまではnatural philosopherと呼んでいた。
・哲学は、おもしろい問いを立て、問い続け、それによっていろんな学問分野がそこから巣立っていくベースとなることが大事な役割。
・科学に限らず「何か言う」ことには必ず推論が伴う。
・妥当な演繹はたしかに真理保存的だが、それと引き替えに情報量は増えない。そこで帰納法が必要となる。
・科学は演繹と帰納の2種の推論がうまく組み合わされることが必要。
・日常生活で普通に帰納を使ってる。使わないと普通の生活まともに送れない。
・統計的関連性があることは、そこに何らかの因果関係があることの手がかりにはなるかもしれないが、それだけでは、どのような因果メカニズムがあるかどうか決めることはできない。
・単なる一般化(たまたまみんなしかじかである)と法則(しかじかでないことはあり得ない)は形の上からは区別がつかない。
反証可能性の高い、より限定的な仮説ほどいい仮説。
・科学の目的は実在システムに重要な点でよく似たモデルを作ることである。