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中山康雄『科学哲学』

読書

人文書院からブックガイドシリーズが始まっていて、詳しくはここを読んでいただきたいのであるが
http://www.jimbunshoin.co.jp/news/n1460.html

この手のシリーズにして目立つのは沖縄論やマンガ・スタディーズあたりかな。
私は『科学哲学』を購入。シリーズの問題なのか書き手の問題なのか、大変ナイスな良書でござった。

さて、本書ではポパーやクーン、クワインといった「ジャスト・ア・科学哲学」な人はきっちり押さえつつ、カントやガリレイアインシュタインなど「え?この人が科学哲学者?」みたいな人まで登場する。
それは正しくて、別に境界線問題や実在論問題ばかりが科学についての哲学ではなかろうと。科学について深い洞察をしている人はいわゆる「科学哲学」の分野以外にもおるやろと。自分が昔から思っていたことをまさに形にしてくれていたので、いやーここは拍手喝采でありました。

ファイヤアーベントをさしおいてローダンラウダン)を入れてるあたりなんというかお里が知れる感があるが……本書を読んだ限りごりごりの反・相対主義系の人ではないと思う。

科学哲学では、科学全般についての哲学と、個別科学の哲学というのがあるのだが、本書では個別科学の哲学にも一章さいていて、これはありがたい!

量子力学の哲学…レッドヘッド、ゲルマン
生物学の哲学…ソーバー
心理学・心の哲学チャーチランド

本書ではいわずと知れたアラン・ソーカルとジャン・ブリクモンの『知の欺瞞』も登場する。彼らはクーンやファイヤアーベントの名前を引き合いに出し、認識的相対主義への批判を行っているが、著者によればこれは1970年代の科学的実在論者としてのパトナムや、ラウダンといった科学哲学者の議論に依拠したものにとどまっており、新しい論争の地平を切り開くことはできていない、という。またソーカルらのラトゥール批判は偏っていること、逆にソーカルらが批判するポストモダニズムの思想家たちについても、自分たちの議論をより強固にするために使用するといった発展がみられなかったことを指摘している。

どういう立場にせよ、怒号を飛ばしたり、「よくやるねえ(笑)」と離れた位置から冷笑したりと、なにかと論壇プロレス的な読まれかたしかされなかった(ように思う)この事件を、ここまで直視し、分析しているのには「ソーカル事件からもうここまで来たか……」とちょっと感動すらしてしまいました。

第1部 科学哲学前史
 アリストテレス『自然学』
 ガリレイ『天文対話』
 カント『プロレゴメナ
 マッハ『時間と空間』

第2部 論理実証主義の運動とその限界
 カルナップ『論理的構文論』
 ライヘンバッハ『科学哲学の形成』
 ウィトゲンシュタイン論理哲学論考
 ゲーデル不完全性定理
 ポパー『推測と反駁』
 大森荘蔵『流れとよどみ』

第3部 「新科学哲学」という反乱――パラダイム論の登場
 ハンソン『科学的発見のパターン』
 クーン『科学革命の構造』
 クワイン『論理的観点から』
 村上陽一郎『科学史の逆遠近法』

第4部 パラダイム論以降の科学哲学
 ラカトシュ『方法の擁護』
 ローダン『科学は合理的に進歩する』
 ハッキング『表現と介入』

第5部 科学論への展開
 ブルア『数学の社会学
 ソーカル、ブリクモン『「知」の欺瞞』
 ラトゥール『科学論の実在』
 フラー『科学が問われている』

第6部 科学哲学基礎論の諸説
 ヘンペル『科学的説明の諸問題』
 フラーセン『科学的世界像』
 パトナム『理性・真理・歴史』

第7部 個別科学の哲学
 アインシュタイン相対性理論
 レッドヘッド『不完全性・非局所性・実在主義』
 ソーバー『進化論の射程』
 ゲルマン『クォークジャガー
 チャーチランド『心の可塑性と実在論
 ドゥ・メイ『認知科学パラダイム論』

科学哲学 (ブックガイドシリーズ基本の30冊)

科学哲学 (ブックガイドシリーズ基本の30冊)