アール・コニー+セオドア・サイダー『形而上学レッスン』

形而上学レッスン―存在・時間・自由をめぐる哲学ガイド (現代哲学への招待Basics)

形而上学レッスン―存在・時間・自由をめぐる哲学ガイド (現代哲学への招待Basics)

  • 作者: アールコニー,セオドアサイダー,Earl Conee,Theodore Sider,小山虎
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2009/12
  • メディア: 単行本
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本書は分析哲学の一分野、「分析形而上学」の入門書であります。

分析哲学形而上学は水と油と思っている人も多いことと思う。間違いではないが、それは20世紀前半に限り正しい。「前期」分析哲学(ろんりじっしょうしゅぎのこと)が伝統的形而上学をDISっていたのも今は昔、今や多様な展開をみせる分析哲学形而上学を取り込み従来のイメージを打破って新しく生まれ変わらせ、「分析形而上学」なる分野は現在最もホットな分野になっている、といっていいのではないかと思う。ただし、そこはやはり分析哲学なわけで、タイトな議論を展開している。

まあ一般的に形而上学といえば、もう終わったものとみなされてるわけで、大陸哲学系の人とかが「形而上学なんつうフワフワしたものは……」とかいってるの見ると、ちょっと混乱するw

目次

第1章 人の同一性
第2章 宿命論
第3章 時間
第4章 神
第5章 何かがあるのはどうしてか
第6章 自由意志と決定論
第7章 物体の構成
第8章 普遍者
第9章 必然性・可能性
第10章 形而上学とは何か

自分が読んで興味を持ったのは、第1章、第3章、第6章、第7章、第8章あたりでしょうか。
いやあ……自分が形而上学慣れしてないせいか、「時間は流れるものではなく静止している」とか「四次元主義的な物体の構成」とかあまりにお茶の間からかけ離れたというか、直観に反したお話にどうも「ほえー」となってしまって。。

まあ、ひとついえるのは、実生活の役には立たないw

ただ、このカッ飛んだ議論はSFのネタになるかもしれません。>SF作家志望のかた。
たとえば『クォンタム・ファミリーズ』も本書の第9章で扱ってる「可能世界説」の議論から生まれたといっても言い過ぎではないです。

岩波講座 哲学〈2〉形而上学の現在

岩波講座 哲学〈2〉形而上学の現在

あ、あとこれの柏端達也氏のデイヴィドソンの出来事論だけ読んだ。この方は日本の分析形而上学の俊英らしくて、デイヴィドソンの翻訳を手がけていたりする。柏端達也という名前は覚えておいて損はないのではないか。
他の方のもパラパラした感じ、古代哲学史なんかを専門にしてる人の中にも分析的と呼べそな文章書いてる人もいて、伝統的形而上学と分析形而上学ってキッチリ分かれるものではなくてグラデーションのようになってるのかもしれない。