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アレックス・ローゼンバーグ『科学哲学 なぜ科学が哲学の問題になるのか』

著者のローゼンバーグは1946年生まれ、これまでにラカトシュ*1とファイ・ベータ・カッパ協会の教授賞*2をゲットしており、社会学の哲学から生物学の哲学まで関心は幅広い。本書は、著者ローゼンバーグによれば「ヘンペルの『自然科学の哲学』を継承するに相応しいものを執筆しようという途方もない野望から始まった」そうである。その試みが成功しているか否かの判断はとても私にはつかないけれど(ヘンペル読んでないから的な意味で)、本書が自信を持っておすすめできる良書であるとは思いますハイ。

科学哲学で主に問題になってる「合理主義/相対主義」「自然主義/第一哲学」「実在論反実在論」からラトゥールやエディンバラ学派、ソーカルあたりの科学論にまで言及しており、大体のトピックが網羅されてると思う。

そういうことから、帯にも「最良の入門書」と書いてあって、もちろんそれは否定しないのだけれど、網羅的であったり1から順に解説しているということは、すらすら読める易しい本であることを意味しない。ローゼンバーグの解説は周到で密度が濃いものであるため、気を抜いていると初学者は置いていかれるかも。その分、最後までじっくり読み通せばかなり基礎体力的なのがつくんじゃないかと。また、本書で展開される議論は狭義の科学哲学に納まるものではなく、その射程範囲は、認識論や形而上学まで届きうるような、かなり広いものではないかと思われる。

ところでこないだツイッター上で相対主義反実在論を混同してると思われるつぶやきを見かけたのですが、ラリー・ラウダン反実在論者でありながら合理主義者であるように、その2つは別の問題ですお。

あとそれぞれの章についてる読書案内にはかなり力はいってて、日本ではまだまだ十分に紹介されない人たちが載っててけっこー使える。にほんごの本でもちらっと出てきたりするので「おお、レプリンだー」みたいにちょっとアガる。まああんまりいうと「あー、なんで日本で○○翻訳されないんだろなあ(ドヤァ」とかこれみよがしにつぶやいてる方みたいで若干アレなので自重しておきますがw新しければいいってもんでもないしね。

たとえば網状モデルみたいな必殺技を駆使するラウダンと比べて*3バランスのとれた良心的な一冊ではないでしょうか。

オマケ

割と最近NYTでTIMOTHY WILLIAMSONと自然主義について論争していたので、それもはってみます。

ウィリアムスン
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2011/09/04/what-is-naturalism/
ローゼンバーグ
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2011/09/17/why-i-am-a-naturalist/?ref=opinion
ウィリアムスン
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2011/09/28/on-ducking-challenges-to-naturalism/

科学哲学―なぜ科学が哲学の問題になるのか (現代哲学への招待 Basics)

科学哲学―なぜ科学が哲学の問題になるのか (現代哲学への招待 Basics)

*1:科学哲学の優れた著書に与えられる、が受賞したのは本書ではない

*2:哲学への優れた貢献に与えられる

*3:ラウダンもローゼンバーグも自然主義者だがこの二人の間でかつて自然主義陣営内部の論争があった