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ポール・ファーマー『権力の病理』

ポール・ファーマーは貧困国で結核エイズの医療活動を行ってきた医師・医療人類学者であり、政治哲学的にはアマルティア・センに近く、じっさいセンが序文を寄せている。
1部はハイチなどで著者が見聞きしたことの記述やインタビュー、2部は通常の人権の定義に対する批判が展開され、研究や分析と、治療の不平等に取り組む実際主義的な活動が分離していることは戦術的にも道徳的にも失敗であると主張される。
著者のアカデミックな倫理学に対する否定的な判断は吟味が必要だけど、一読の価値あり。

本書の第1部の表題を「証人となる」にしたことに、私は漠然とした不安を感じる。私の不安にはもっともな理由がある。証言することと、不躾に(あるいは利己的に)引っかき回すことの境目は、どんなに区別しようとしても不明確だ。フィリップ・ブルゴワが、ローラ・ネーダーがかつて発した警告を換言して次のように述べている。「貧困者や無力な者を研究してはならない。なぜなら、彼らについて何を発言しても、彼らに不利になるように利用されるからだ」。人類学者はそうしたがるものだが、自分が確かにその場にいたことを示す以外に利点のない、扇情的なエピソードの挿入などはしないよう心がけた。(p.61)

権力の病理 誰が行使し誰が苦しむのか―― 医療・人権・貧困

権力の病理 誰が行使し誰が苦しむのか―― 医療・人権・貧困