貴堂嘉之『アメリカ合衆国と中国人移民 - 歴史のなかの 「移民国家」 アメリカ』

これまでの米国の移民史研究ではヨーロッパ系移民を中心に論じられ、アジア系移民はあまり扱われることがなかったが、本書はそこにばっさりメスを入れ、東南アジアの植民地化とそれに伴う広東、福建からの労働力移動といったプル要因やアヘン戦争太平天国の乱以後の政治的・社会的混乱といったプッシュ要因などグローバルな歴史的文脈のなかに接続させ、中国人移民政策の政策決定過程に加えられたさまざまな圧力を検証している。

また、黒人問題のみに焦点が当てられがちだった南北戦争や19世紀から世紀転換期にかけて「アメリカ人」の境界形成のポリティクスに中国人移民が深くかかわってきたことを明らかにするなど広範な問題領域を扱う力作となっている。

岩倉使節団がサンフランシスコへ立ち寄ったときのチャイナタウン言及など、読み物としても面白い。

アメリカ合衆国と中国人移民 ?歴史のなかの「移民国家」アメリカ?

アメリカ合衆国と中国人移民 ?歴史のなかの「移民国家」アメリカ?