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増田聡『その音楽の<作者>とは誰か』

Twitterで音楽美学・音楽社会学クラスタにはおなじみ増にぃのごほん。
つぶやきのノリと文体のギャップに最初いささか戸惑う・笑

ロラン・バルトミシェル・フーコーの「作者の終焉」の議論とのアナロジーで、ニコニコ動画やクラブミュージックのサンプリングやリミックスといった実践をポストモダン美学の格好の例証として扱う、というのは90年代頃からの文芸評論のひとつのトレンドなのであるが著者は節操なく「作者」の死を謳う(一部の)ポストモダン美学にも、「抵抗」を見出すカルチュラル・スタディーズにもコミットすることなくメディア・テクノロジー、産業構造、法制度の変化から「作者」「作品」概念の変容を丁寧に分析することで音楽分野における作者理論の洗練を試みる。

著者が語るようにサンプリング的な実践の「いかに新しいか」だけに注目して「いかに古いか=いかなるかたちで古い概念が保持されているか」を見ないのは片手落ちであろう。本書は新しいものを持ち上げたいバイアスからともすればアジテーション色が強まりがちなトピックについて淡々と記述していて好感が持てる。古くからあるジャンルや様式だからという理由で価値の低いものとしてみたり、なんらかの「べし」に持ち込むのは自然主義の誤謬というやつであろう。

本筋と関係ないけど前半のクラブ・ミュージック史の章ではワープ・レコーズ立ち上げの背景とか諸ジャンルの影響関係とかふつーに勉強になりました。

その音楽の<作者>とは誰か リミックス・産業・著作権

その音楽の<作者>とは誰か リミックス・産業・著作権