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坂井克之『科学の現場 - 研究者はそこで何をしているのか』

現代科学というと真理を追究して純粋に探求を行っているという一般的なイメージがあるかもしれないが実際はポスト獲得や予算取り、昔からなんとなく続いてる制度など、生臭い要素が絡む営みでもある……という割とよく聞く話は科学史やら科学思想などのオハコであったが本書は自然科学者の手によるもの。

てことはさぞかし科学に有利なように書かれてるんでしょうなぁ……と思われるかもしれないが、かなり正直に現代科学の研究不正の問題や研究者の組織、トップジャーナルが社会情勢に依存することなどが書かれている(一部「それは科学に限らないのでは」という話もあった)。といっても「99パーセントは仮説なのだー」みたいな相対寄りの話には向かわず比較対照、ランダム化、盲検化、エンドポイントの設定など、より信頼のおける研究デザインの基準を明記していて、不確かなところのない研究・純粋な探求心を保ち続けるのはとても難しいがよりよい科学を目指すことは捨てない、というスタンス。

この手の話は科学論科学哲学などでいくらかわかっちゃいたつもりではいたが、そういう分野だともっと抽象的な話だったのでこうして実際の科学者による実体験も交えたエッセイという形で読むとぐっと知識に肉付けがされた感じ?ちなみにラカトシュやクーンといった「有名どころ」の名前も登場して結構好意的に紹介されている。

丁寧で読みやすく、科学の組織の制度の話や研究デザインの話の基本が学べるので新書の感覚でさくさく読める。ちくまプリマ―新書とか岩波ジュニア新書から出てもいいんじゃないかって思ったくらい。
等身大の科学とうまく付き合うためのバランスの取れた好著。

科学の現場:研究者はそこで何をしているのか (河出ブックス)

科学の現場:研究者はそこで何をしているのか (河出ブックス)


そういえば聞いたことある名前だと思ったら7年ぐらい前に『心の脳科学』という新書を読んでたのでした。
著者は神経科学者なので「我々は脳の10%しか使っていない」などの神経神話の批判もちょっと出てくる。

心の脳科学―「わたし」は脳から生まれる (中公新書)

心の脳科学―「わたし」は脳から生まれる (中公新書)