2016-01-01から1年間の記事一覧

ポール・ファイヤアーベント『自由人のための知』

科学の相対主義者と言われる人って大抵「私は相対主義をとるわけではない」とか書いてたりするもんなんだけど、ファイヤアーベントという人は相対主義を引き受けてるわりと珍しい科学哲学者で、本書は自伝もちょっと入ってるとはいえポパーdisってヘーゲル擁…

ラリー・ラウダン『科学は合理的に進歩する』

まずはこの邦題に注目されたい。 『科学は合理的に進歩する』 人文学に親しんでいる方なら、タイトルを見ただけで、パラダイム間の共約不可能性とか現象レベルのデータから理論は一つに決まらないという決定不全性だとか、はたまたSTSでもSSKでもなんでもい…

太田紘史編『モラル・サイコロジー 心と行動から探る倫理学』

道徳的判断に関わる心理や行動についての記述的探究を紹介しつつ、それが「〜してはならない」や「〜すべき」といった規範を扱う倫理学説にどう関わってくるかを扱うモラルサイコロジーの本。 なんだか倫理学にケチをつける分野なのではと警戒する読者もいる…

ハロルド・ハーツォグ『ぼくらはそれでも肉を食う―人と動物の奇妙な関係』

やまがたさんが訳し、スティーブン・ピンカーも賞賛、ということから察しがつくと思うが、ジョナサン・ハイトやジョシュア・グリーン、マーク・ハウザーといった勢いのある科学者が出てくる科学寄りの本。倫理学の話も出てくるがそれメインではない。 原題は…

日本動物心理学会監修『動物たちは何を考えている?動物心理学の挑戦』

色の見え方の進化的説明とか(恐竜の時代に哺乳類は夜行性だったので4つの錐体(すいたい)のうち2つを失ったが果実食への適応で3色型を取りもどした等)好き嫌いや薬はだんだん効かなくなるといった、本書に登場する大抵の話はヒトのサブパーソナルな領域…

トマス・ディクソン『サイエンスパレット・科学と宗教』

ベリーショート更(略タイトルについて、科学/と/宗教ということなのかと思っていたら「科学と宗教」という分野がいちおうはあるらしい。 ヨーロッパ学会や国際学会もあるので、へぇそんなにと思うがどれぐらい盛り上がってるかはわからない。 http://www.es…

ローレンス・M・プリンチぺ『サイエンスパレット・科学革命』

ベリーショート更新シリーズ定番の入門書として知られてる(らしい)OUPのvery short introductionシリーズがサイエンスパレットとして丸善から翻訳されておりますが、これはそんなかの「科学革命」を扱ったもの。科学者と宗教家の闘争の時代というような19…

坂井克之『科学の現場 - 研究者はそこで何をしているのか』

現代科学というと真理を追究して純粋に探求を行っているという一般的なイメージがあるかもしれないが実際はポスト獲得や予算取り、昔からなんとなく続いてる制度など、生臭い要素が絡む営みでもある……という割とよく聞く話は科学史やら科学思想などのオハコ…

戸田山和久『恐怖の哲学 ホラーで人間を読む』

戸田山さんはよく文体が言及されるけど『交響するコスモス』に載ってるような終始キリッとした文章もあれば、雑誌の『科学哲学』あたりの論文の、元々持ってるユーモアが滲み出てる程度の文章もあるわけで、本書はどうなのかというと一般向けの新書というこ…