根井雅弘『市場主義のたそがれ』

市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影 (中公新書)

市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影 (中公新書)

市場主義の牙城であるシカゴ学派の系譜について書かれた新書。市場主義というのは政府の干渉より市場のメカニズムを高く評価する経済学の考えで、新自由主義とかリバタリアニズムとかの基盤となってるアイディア。代表的な論者であるハイエクフリードマンシカゴ学派に含まれる。日本で市場主義寄りの人といえば竹中平蔵さんとか池田信夫さんなんかがいますね。いまや共産主義の信頼は地に落ちたけど、経済学での論争は終わったわけではなく政府の干渉を認める(かつての中道)か、市場メカニズムのみかで経済学の論争は続いていると。ちなみに筆者の立場は「市場メカニズムと政府の経済管理の間の絶妙なるバランスを試行錯誤で模索する以外にない」というもの。

ところでシカゴ学派といえば市場主義一辺倒だと思っていたんだけど、シカゴ学派の歴史をさかのぼればヴァイナーやナイトなどかつては色んな論者がいたんだとわかる。特にナイトはなかなかの思想家で、不確実性とリスクの違い、よいビジネスゲームの条件などのアイディアは今でも見るべきところがあるんじゃないか、と思う。シカゴ学派というとやたらとハイエクフリードマンばかりが注目されるけどここら辺の人たちにもスポットライト当たればいいのにと思った。昨年あたりから市場主義の信頼が揺らぎはじめた(?)今こそ。