2014-01-01から1年間の記事一覧

松井智子『子どものうそ、大人の皮肉』

手順はじつは非常に簡単だ。まず、いくつかに分ける。もちろん量によっては、ひとつにまとめてしまってもよい。いっぺんにやりすぎないことが大切だ。すぐにどうということはないが、いずれやっかいなことになるかもしれないからだ。間違うと、高くつくこと…

金水敏『コレモ日本語アルカ? 異人のことばが生まれるとき』

唐突だが次のような話し方を示されたとして 1そうじゃ、わしがしっておるんじゃ 2そうよ、あたくしがぞんじておりますわ 3そや、わてがしってまっせー 4これながいきの薬ある。飲むよろしい。 多くの日本人は1を老人2をお嬢様3を関西人、4を中国人と捉えるの…

エリック・ブライシュ『ヘイトスピーチ - 表現の自由はどこまで認められるか』

本書ではレイシズムを「皮膚の色、エスニシティ、国籍、あるいは宗教といった特性に基づいた排除や中傷」としている。大事なことなので最初に書きました。危険なレイシズムを抑え込もうという人達と、積極的にレイシズムを支持する人達あるいはレイシズムを…

『シリーズ 新・心の哲学Ⅰ 認知篇』

勁草書房から出ていた「シリーズ心の哲学」の新シリーズが登場。とりあえず「Ⅰ」だけ読んでみたが、ここ数年の哲学的・経験的探求の成果が取り入れられ、概念の理論や他者理解などホットなトピックも抑えてあって、タイトルに偽りのない一冊になっている。読…

パルヴェーズ・フッドボーイ『イスラームと科学』

パキスタンの理論物理学者によるイスラーム圏の科学史の本。 前言は1979年ノーベル物理学賞というのを受賞した(らしい)モハンマド・アブドゥッサラームによる。原書は1991年と20年以上前の本なので状況は変わっているかもしれないが実に面白く、アップデー…

『知のユーラシア1 西洋近代哲学とアジア』

本書の目的は近世(17世紀末から19世紀全般)における思想・宗教・文化面での「東西交流」「東西関係」に新たなメスを入れること。たとえばライプニッツがイエズス会の中国伝道師らとの交流を通して早くから中国思想に強い関心を示していたことは比較的よく…

増田聡『その音楽の<作者>とは誰か』

Twitterで音楽美学・音楽社会学クラスタにはおなじみ増にぃのごほん。 つぶやきのノリと文体のギャップに最初いささか戸惑う・笑ロラン・バルトやミシェル・フーコーの「作者の終焉」の議論とのアナロジーで、ニコニコ動画やクラブミュージックのサンプリン…

貴堂嘉之『アメリカ合衆国と中国人移民 - 歴史のなかの 「移民国家」 アメリカ』

これまでの米国の移民史研究ではヨーロッパ系移民を中心に論じられ、アジア系移民はあまり扱われることがなかったが、本書はそこにばっさりメスを入れ、東南アジアの植民地化とそれに伴う広東、福建からの労働力移動といったプル要因やアヘン戦争、太平天国…

ポール・ファーマー『権力の病理』

ポール・ファーマーは貧困国で結核やエイズの医療活動を行ってきた医師・医療人類学者であり、政治哲学的にはアマルティア・センに近く、じっさいセンが序文を寄せている。 1部はハイチなどで著者が見聞きしたことの記述やインタビュー、2部は通常の人権の…

スコット・O・リリエンフェルドほか『本当は間違っている心理学の話 - 50の俗説の正体を暴く』

「サブリミナル効果でものを買わせることができる」とか「怒りは抱え込まず発散したほうがいい」といった通俗心理学に対してより巧みに操作された実験データによってそれらが不適切なことを明らかにしていく科学的な心理学の本、 とかいうと一部苦い顔する人…

無題

最近新書を出した戸田山さんの立場についてじゃっかんのフォロー戸田山の立場 1.「物質的世界のしくみがどうなっているか」については経験的探求を優れた手段とみなす 2.科学的考慮を超えた、経済的・社会的・倫理的考慮が入り込んでくる問題に対して科学・…