ジョン・マクダウェル小特集
ジョン・マクダウェルは日本では知名度はあまり高くないけど英語圏ではデイヴィドソン、ダメットに並ぶビッグネームの哲学者。主な関心は言語哲学、心の哲学、形而上学、認識論、倫理学…と、ここまでならそう珍しくないが、特筆すべきは師匠のウィルフリド・セラーズの影響か、大陸系哲学の議論(主にヘーゲル)も積極的に取り入れるところ。
マクダウェルの『徳と理性』(1979年)は後に「徳倫理学」と総称されるようになった現代倫理学の一潮流の記念碑だったそうな(マクダウェルは自らを徳倫理学としないそうだが)。今のところ日本語で読めるのはこちら↓
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2004/06
- メディア: ムック
- クリック: 16回
- この商品を含むブログ (10件) を見る
- 作者: コーラダイアモンド,ジョンマクダウェル,イアンハッキング,ケアリーウルフ,スタンリーカヴェル,中川雄一
- 出版社/メーカー: 春秋社
- 発売日: 2010/07/23
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 40回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/06/28
- メディア: 雑誌
- 購入: 2人 クリック: 28回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
下の雑誌のほうはマクダウェル特集で、『徳と理性』やドレイファスとの論争が載ってるので現時点で入門書にもってこい。論争といえばマクダウェルはデイヴィドソンやダメットとも論争していたことがある(いうほどそんな立場違わないっぽいけどね)。上の雑誌は『世界を経験する』所収。
彼の倫理学の立場をざっくり説明すると後期ウィトゲンシュタインを援用して、コード化しえぬものと捉える。とはいえ非理性的動物の身体化された対処とする立場を退け、形式において概念的な内容を享受する能力は認める。
そういえば日本の法哲学の安○さんはマクダウェルをdisってたらしいが、彼とは立場がまったく異なるので、これは理の当然というやつですな。門脇俊介さんはマクダウェル好きみたいですね。戸田山さんがマクダウェルに対してなんだか微妙な態度なのはマクダウェルが反自然主義者の味方になりそうな所があるからかもね。*1
今のところ代表作は『心と世界』だけどこれはまだにほんごになってないので、春秋社の「現代哲学への招待シリーズ」か勁草書房の「双書 現代哲学」あたりから出ないかしら。
Mind and World: With a New Introduction by the Author
- 作者: John McDowell
- 出版社/メーカー: Harvard University Press
- 発売日: 1996/09/01
- メディア: ペーパーバック
- クリック: 22回
- この商品を含むブログ (12件) を見る
*1:いわく「あの難解な、そして難解であるがゆえになんだか有り難く、多くの優秀な若手をあり地獄のように引き寄せる魔性の哲学者、マクダウェルの登場です。高名さゆえに手にとって挑戦するも挫折を繰り返してきたみなさま(って私だけかも)」http://www.info.human.nagoya-u.ac.jp/lab/phil/forum/past.html