分析哲学と法哲学・政治哲学の関係とか

……みたいなことに今ちょっと興味あります。

川本せんせいの『ロールズ』なんか読むとけっこう分析哲学の有名人がポンポン登場するんDAYONE。
たとえば冒頭の架空インタビューでロールズにこんな発言させてるね。

ところで今のラインアップ(『現代思想の冒険者たち』)で私に直接影響を与えた人物は、クワインだけです。彼一流のプラグマティックなホーリズム、いわゆる「知のネットワーク理論」から啓発を受けながら、私は「反照的均衡」という倫理学方法論をみがいてきました。それとウィトゲンシュタイン。哲学修行時代にマルコム先生から手ほどきを受けた私にとって、彼はいわば師匠の師匠にあたります。また、「二つのルール概念」という論文もウィトゲンシュタインの『哲学探究』との出会い抜きには書けなかった作品です。

ロールズ (「現代思想の冒険者たち」Select)

ロールズ (「現代思想の冒険者たち」Select)

ロールズは院時代にノーマン・マルコム、マックス・ブラックに師事してるけど、ウィトの弟子の弟子の位置にもうロールズきちゃうのか。ほおお。

ウィトゲンシュタイン―天才哲学者の思い出 (平凡社ライブラリー (266))

ウィトゲンシュタイン―天才哲学者の思い出 (平凡社ライブラリー (266))

他にもロールズは1952年から1年間オックスフォード大(ライルやオースティンがいた頃!)に留学して日常言語学派を参与観察している。
そこでH.L.A.ハートの講義も聴いてるのだそう。そういやハートも日常言語学派直系の法哲学者か。
トゥールミン『倫理における理性の位置の検討』の書評も書いてるし日常言語学派との関係も見逃せないな。

さらに1960年科学史と哲学を教えていたMIT時代にはパトナムやチョムスキーと交流しているとあるな。
細かいとこだとロールズの「エクスプリケーション」は元々はカルナップの用語だったものを倫理学方法論に転用したものだとか。

で、『正義論』からノージックやセンやサンデルやらヌスバウムといった流れが出てくるわけですね。てかノージックも師匠が科学哲学者カール・ヘンペルだし、分析系の認識論や形而上学みたいなことやってるしな。

日本だと分析哲学法哲学〜政治哲学は別モノってことになってる印象なんですが、これら↓は絡めて論じている。

伊藤克彦せんせいによる、クワインホーリズムロールズ、ドゥオーキンへの影響を論じたもの。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007620101

これまでの日本の法哲学ではロールズやドゥオーキンの理論を単独で取り上げるだけで、その背後に潜む共通の問題を考察し指摘する声は少なく、またドゥオーキンやロールズへのホーリズムの影響はしばしば指摘されつつも本格的に検討した論文は邦語文献ではほとんどないと思われるため、その点で本稿の意義はあると考える。

そしてこちらは井上達夫せんせいがクワインの「根源的翻訳」やデイヴィドソンの「慈善の原理」に言及しているもの(pdf)。
http://www.h4.dion.ne.jp/~jssf/text/doukousp/pdf/200705/0705_7075.pdf


それにしても分析哲学の影響を組み込んだ法哲学や政治哲学の一般向け解説が日本であまり見かけないのはあらためて謎だなあと思う(もちろん私が見逃している可能性大である)。でもまあそれちゃんとやろうとしたら大変そうではあるな。