門倉貴史『統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか?』
- 作者: 門倉貴史
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/10/17
- メディア: 新書
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GDPの実績が各地方の公務員の給与に反映されることから多くの地区は「えい、やっ」と作為的に過大推計してしまうのだ(中央政府へ納める税金を減らすためにわざと低めに推計する地域もあるが)。
また、開発途上国では資金や人的資源が乏しく、正確な統計調査を実施することは難しいらしい。ロシアや中国みたいな比較的進んだ国でさえあてにならないのだから、ほとんどの国は疑ってかかったほうがいいかも?ちなみにもっとも精度が高いといわれるのは意外にもブラジル。GDP統計は海外投資したり金融引き締めとかするための指標となるわけで、実はこれってかなり重要な問題なのでは。これの対策として筆者は
実質GDP成長率にバイアスがかかっていることを踏まえたうえで、GDP統計だけでなく、物価統計、エネルギー消費量、雇用統計など様々な経済統計を組み合わせて検討することが必要だろう。
また、
時間とお金に余裕があれば、実際に中国まで足を運んで、景気の状態を肌で感じるのもいいかもしれない。筆者自身は現地に足を運ばなくてもできるだけ現地の人との連絡を密にして、電話によるヒアリングを定期的に実施している。
と述べている。統計に頼るタイプの人がこういうフィールドワークを勧めてるのが意外。「自分の経験や印象などあてにするな!」とかいうもんだと思ってた。
さらにGDPには組み込まれない「地下経済」というのがあって、これの中身は麻薬の取引などヤクザな商売と脱税が中心で、70%が脱税。筆者が通貨的アプローチで試算した結果2004年の地下経済は22.4兆円(!)だそう(筆者は一応の目安であると強調している)。アメリカなどは地下経済を考慮に入れなかったために経済政策が失敗したこともあるという。ひええ。
他にもいろんなタイプの統計やそのバイアスが出てきますが、すぐ使える知識・テクニックをまとめると
・母集団に何が含まれ何が含まれてないかチェック
・社会の構造や習慣の変化によるみせかけの相関に注意
・イベントの「経済効果」のような一部地域のプラスは他の地域でマイナスになってるので、「横浜市の経済効果」などと限定しないとあまり意味がない
・資金や人的資源の問題があるため統計の精度は途上国では低め
・公式統計に出てこない経済活動があり、無視できないほどの影響があり今後肥大化していく可能性がある
とまあこんなとこかな?