トマス・ディクソン『サイエンスパレット・科学と宗教』

ベリーショート更(略

タイトルについて、科学/と/宗教ということなのかと思っていたら「科学と宗教」という分野がいちおうはあるらしい。
ヨーロッパ学会や国際学会もあるので、へぇそんなにと思うがどれぐらい盛り上がってるかはわからない。
http://www.esssat.eu/
http://www.issr.org.uk/

なんとなく必要な気がするので原著者紹介するとトマス・ディクソンさんはロンドン大学クイーンメアリー校歴史学上級講師でタイムズ文芸付録(T.L.S)で書評を執筆しているひと。
そして宗教といっても、本書に関してはキリスト教中心でブードゥー教とか仏教は扱っていない。「科学と、宗教・神学・ID等との論争史、時々科学哲学」みたいな内容。

有名な科学者の宗教がらみのエピソードとかは面白く読んだが自分に言える範囲でちょっと気になった点2つ。
1つ目。科学哲学的な実在論について、悲観的帰納法の話をするのはいいのだが、前後の流れから科学の相対化に都合のいい話として読む読者がいそうだ。
悲観的帰納法のラリー・ラウダン相対主義に反対する合理主義者であったので、科学哲学的な実在論についてもう少し説明がいると思う。

2つ目。線引き問題について、科学哲学者のあげる線引き基準が検証可能性と反証可能性で、それに対して「これでは十分ではない」って、流石にちょっと知識が古すぎないだろうか。
ディクソンは歴史屋さんなので仕方ないかもしれないが、これだと反証主義が最新の科学哲学の見解でそれがどうもダメっぽい、というふうに読者を導きそうだ。
たしかに反証可能性では厳密な線引きにならなかったが他にもいろいろ基準があって合わせ技である程度は引ける、といった見解もあるのでそっちについても紹介してほしかったというのが正直なところ。

ディクソンはぎりぎりのところで非相対主義にとどまるのだが、人によっては(より強い合理主義の方とか)アウトな記述もあるかもしれない。

科学と宗教 (サイエンス・パレット)

科学と宗教 (サイエンス・パレット)